書評
「まさに目の前に
アニメーション的な映像が
広がっていくような臨場感」
ー漫画家 大谷じろう
非常にシンプルな空想科学“戦争” 小説。
ストーリーの展開が至ってシンプル。かの中央アジアをめぐる英ロの覇権争い、
世にいうグレート・ゲームから二世紀を経て今、汎アジア対米欧の二極間争闘ととし、
そこに男女の愛憎が絡んでくるという物語設定で、いたってわかりやすい。
本作に度々登場するバイオテクの詳細、
数々の人造モンスターたちの登場等々。
そして派手な戦いのあり様。事細かに書かれた生成の過程等、
往時の空想科学小説に遭遇した時のワクワク感がよみがえってくる。
作者は、この手のバイオテクのからくり、
現代のウエポン事情に該博な知識をお持ちの方と見受ける。
面白かった部分は草薙剣とイリーナの聖剣シャムシールとの一騎打ち。
日本神話とゾロアスターとの因縁。
昔「日本語の起源はウル・シュメールにある」という話を書いた在野の研究家がいて、
大変面白かった記憶がありますが神々の世界の融通が
今時珍しくよみがえったようでした。
また新グレート・ゲームにおいて米欧に加担し
裏切り国家の烙印を押された日本を血祭りにあげるために、
その象徴である富士山のマグマを爆発させる企て。
なるほど、その手があったか と思わせる発想。
ー株式会社 小学館 文藝ポスト歴代編集長 阿部 剛